• 競走馬の予後不良についてー悲しい事故と今後の希望

    2024年3月3日

    予後不良とは

    予後不良という言葉は、競馬ファンなら一度は耳にしたことがあると思います。サイレンススズカやライスシャワーなどの名馬もレース中の骨折で予後不良となり安楽死処分となりました。みなさんも競馬を現地で観戦したり、テレビで観たりしている時に、競走馬がレース中に骨折して転倒したり、脚を庇っている姿を見たことがあるかも知れません。そんな時はとても悲しい気持ちになりますが、それはその馬がその後どうなるのかが分かっているからです。競走馬がレース中に骨折等を発症して競争中止してしまった場合、骨折の回復が見込めず予後不良と診断されると、その場で安楽死処分になってしまいます。これはとても悲しい事ですが現実であり、その時点でその馬にとって最善の選択でもあります。

    馬は3本の脚では生きる事ができない

    人間の場合、脚が骨折しても手術や治療をすれば治すことができます。たとえ治らず脚を切断しなければならなくなったとしても、それが原因で命を落とすことはないでしょう。しかし馬は4本の脚のうち、1本でもダメにならなくなってしまったら、3本の脚では生きていくことができません。

    馬の体重はだいたい400kg~550kgくらいあり、それを4本の脚で支えています。そのうちの1本が欠けてしまうと、残りの3本でこの体重を支えることになります。そして馬は脚に痛みを感じると寝起きすることができなくなり、かなりの負担が掛かってしまいます。常に脚に負担が掛かる状態が続くと、蹄葉炎や様々な病気を患ってしまいます。蹄葉炎とは馬の蹄の病気で、蹄の内部の血液循環が阻害され蹄の内部に炎症が起こり激しい痛みを伴う病気です。蹄葉炎はなかなか進行を止めることが難しく、馬に相当な苦痛を与えてしまうので、安楽死処分となるケースが多いのです。

    安楽死処分は馬の為

    安楽死処分がとても残酷だと考える人もいると思います。しかし治療が非常に難しい粉砕骨折や開放骨折の場合、その馬に相当な苦痛と負担が掛かってしまう事を考えると、安楽死処分により楽にしてあげる方が良いとされています。

    かなり昔の話ですが、テンポイントという名馬がいました。トウショウボーイやグリーングラスと3強を形成した1頭で、天皇賞や有馬記念を勝っています。「流星の貴公子」との呼び名で人気を誇ったテンポイントですが、ライバルであるトウショウボーイを破った1977年の有馬記念の次のレース、翌年の日経新春杯に出走しました。ハンデ戦でもありましたが、今ではあり得ない66.5kgの斤量を背負い、4コーナー付近で左後肢を骨折し競走を中止してしまいました。

    骨折の程度は、骨折した骨が皮膚から突き出す開放骨折という重度のものでしたが、当時はすぐに安楽死処分にはならず、治療が施されました。獣医師は安楽死を勧めたそうですが、馬主である高田さんが微かな希望に掛けた事、ファンからテンポイントの助命を嘆願する電話が数千件寄せられた事などを受けて、手術を行う事になりました。手術は成功しテンポイントは助かるかと思いましたが、結局蹄葉炎を発症し、骨折から43日後、全身衰弱による心不全の為亡くなりました。(ウィキペディア参照)

    このように骨折した馬を助けたいと助命を嘆願しても、結局馬には痛みと苦しみを与えるだけで、とても残酷な事になってしまいます。そう考えると少しでも苦痛を与えない為に安楽死処分を行うことは間違っていないのではないでしょうか。

    予後不良が激減?

    しかし、ここ最近ですがあまり予後不良という文字を見る機会が減ってきたように感じます。そこで私なりに調べてみました。2023年にJRAでレース中に予後不良となった件数を数えてみたところ、32件でした。これが多いのかどうか何とも言えませんが、感覚として少なくなったように感じます。これを月別で見てみると以下になります。

    1月2件
    2月4件
    3月3件
    4月2件
    5月4件
    6月1件
    7月3件
    8月3件
    9月1件
    10月4件
    11月3件
    12月2件
    合計32件
    JRA 2023年月別予後不良発生件数(JRAホームページ 今日の出来事参照)

    これを見ると月で多くても4件、少ない時は1件ですから、少なくなっているように感じます。実際のところJRAでは予後不良の統計を出していないので、正確なところは分かりません。

    しかし近年、育成や調教の技術がレベルアップし、レース間隔等、馬への負担が掛かりにくいように配慮されていることが予後不良の減少につながっているように感じます。

    それとは逆にレース中の心房細動や心不全を発症する件数は増えているようにも感じますので、この件については、後日改めて調べてみたいと思います。

    予後不良になっても安楽死とは限らない

    もちろん医学の進歩もあり、予後不良と診断を受けても安楽死処分とはならず、長い年月を掛けて治療し、無事に完治して牧場で生きている馬もいます。YouTubeで発見しましたが、フロリダパンサーという馬が笠松競馬場でのレースで右脚靭帯断絶という大けがを発症し競争中止しました。回復の見込みがなく安楽死処分となるはずでしたが、1年の闘病生活の後、なんと今でも「引退馬の森」で暮らしています。YouTube動画はこちらから→https://www.youtube.com/watch?v=IaOMCsqzmoo

    まとめ

    競馬を楽しむ以上、レース中に馬が骨折して競争中止となる光景を見たくはないですし、予後不良となり安楽死処分を受ける馬が、今以上に減ってほしいと願います。もちろん0件にすることは難しいですが、1件も発生しない月があるようになれば嬉しいですね。

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